HOW TO CHOOSE
モバイルバッテリーモバイルバッテリーのパススルー充電|可否の1語は4製品とも仕様表の外にある
この記事で分かること
公表値を読み解いて、選ぶ基準を整理。
モバイルバッテリー4製品のパススルー充電の記載を、書いてある場所と深さで並べ直した。本体を充電しながら給電できるのか買う前に確かめたい人に向けて、可否の1語が4製品とも仕様表の外から来ていることと、W数を書く1社では出力が単ポート最大の25%まで落ちることを示した。
THE REASON BEHIND THE CHOICE
公表資料から、疑問を読み解く。
公開資料に基づく記事です。実機による検証は行っていません。
目次
出先で、コンセントが1つしか空いていない。充電器も1つ。スマートフォンもモバイルバッテリーも両方減っている。バッテリーを充電器に挿して、そこからスマートフォンへ伸ばせば、一度に両方入るはずだった。
この使い方をパススルー充電と呼びます。困るのは、可否がどこにも見当たらないことです。仕様表を上から下まで読んでも、その行が無い。
4製品を並べた比較記事の比較表では、この列は「対応」「非対応」「記載なし」の1語で埋まります。その1語がどこから来たのかを4製品ぶん並べ直したのが、この記事です。
2026年9月時点のメーカー公表値と、その公表値どうしの計算だけで進めます。実機は持っておらず、挿して確かめた記録もありません。
4製品とも、仕様表にパススルーの欄が無い
まず、各社が何をどこに書いているかを並べます。
| 製品 | 使っている語 | 書いてある場所 | パススルー中のW数 |
|---|---|---|---|
| Anker A1388 | パススルー充電には対応しておりません | ご注意欄 | 非対応 |
| CIO SMARTCOBY TRIO 67W SS | パススルー充電に対応 | 製品特徴とFAQ | 記載なし |
| エレコム DE-C66-10000WH | “まとめて充電”に対応 | 製品の特長欄 | 記載なし |
| オウルテック OEC-LPB10024-BK | パススルー充電に対応 | 製品特徴の注記+取扱説明書 | 最大7.5W |
仕様表にパススルーの欄を持っている製品は、4製品で0です。 出どころは、ご注意欄・製品特徴・製品の特長欄・取扱説明書の4か所に散っていて、しかも1つは商品ページの外にあります。
語も揃いません。エレコムだけ「パススルー」という単語を使わず、「まとめて充電」と呼びます。 商品ページで「パススルー」を検索して見つからなかったとしても、非対応とは限らない、ということです。
比較記事は、電池の種類・PSE・航空機の持ち込みを「書いてあるかどうかより、ページのどこに書いてあるかで割れる」と書きました。パススルーはその4列目で、しかも例外が1つもありません。
書いてある深さが、4段に分かれる
同じ「仕様表の外」でも、書かれている量はまったく違います。
- Anker — 非対応であることに加えて、何が起きないかまで書く(本体を充電しながら他の機器へ給電することはできない)
- CIO — 対応している、の1語。条件もW数も無い
- エレコム — どちらが先に充電されるか、順番を書く
- オウルテック — パススルー中のW数を書く
「対応」と書いている3製品のうち、そのとき何Wまで出るのかを書いているのは1社だけです。 残る2社では、その状態がどのくらい使えるものなのかを買う前に判定できません。
順番を書いた唯一の製品で、その順番が2通りある
エレコムは「まとめて充電」の説明に、注記を2つ並べています。1つめは、スマートフォンへ優先的に充電され、そちらが終わると本製品に充電される、という趣旨。2つめは、接続機器によっては本製品への充電が優先され、スマートフォンへの充電に時間がかかる場合がある、という趣旨です。
同じ欄の中で、優先されるのがスマートフォン側だと書いた直後に、機器によっては本体側が優先されると書いてある。どちらに転ぶかの条件は「接続機器によっては」までしか書かれていません。 順番を公表しているのは4製品でここだけなのに、その順番は読者の手元の機器で決まる、という形になっています。
オウルテックの1台の中で、出力が2回落ちる
W数を書いている1社を、同じ製品の他の公表値と並べます。すべてメーカーが自分で出している数字です。
| 状態 | 公表値 | 単ポート最大に対して |
|---|---|---|
| 単ポート最大(USB Type-C) | 20V/1.5A = 30W | 100% |
| 2ポート同時の合計 | 5V/3A = 15W | 50% |
| パススルー中 | 最大 7.5W | 25% |
半分ずつ、2回落ちます。 30W が 15W になり、その 15W がさらに半分の 7.5W になる。パススルー中の 7.5W は 5V × 1.5A で、2ポート同時の 5V/3A とは電圧が同じで電流がちょうど半分です。
比較記事では、単ポート最大から2ポート同時までの落ち方を4製品ぶん並べました(Anker は3分の1、オウルテックは半分、エレコムはもともと15W、CIO は挿し方次第)。3段目にあたるパススルー中の行は、そこには置いていません。 置ける製品が1つしかなかったからです。
同じ製品の中でもう1つ比べられます。この製品の USB Type-A 単独の上限は 9V/2A = 18W です。7.5W はそれに対しても 41.7% でしかありません。 後で見るとおり、パススルー中に出力へ残るのは Type-A 側だと読める製品なので、この比べ方のほうが実際に近い可能性があります。
7.5W は、4製品が公表しているどのW数よりも小さい
4製品の公表出力Wで次に小さいのは、エレコムの 12W(USB-A の単ポート最大と、USB-A どうし2ポート同時の合計)です。
7.5W は、その 12W に対して 62.5%。 4製品が公表している出力Wの中で最も小さい数字が、パススルー中の値でした。「対応」の1語だけを見て2台ぶんの急速充電を期待すると、ここで外れます。
パススルー中に、出力へ残るポートはいくつか
本体を充電する以上、入力にポートが1つ埋まります。そのとき出力に何が残るのかを、公表されているポート構成から並べ直します。
| 製品 | 入力に使えるポート | 出力ポート | パススルー中に出力へ残るもの |
|---|---|---|---|
| Anker A1388 | USB-C のみ | USB-C×1 / USB-A×1 | 非対応 |
| CIO SMARTCOBY TRIO 67W SS | USB-C1 / USB-C2 | USB-C×2 / USB-A×1 | 記載なし |
| エレコム DE-C66-10000WH | USB Type-C / USB Micro-B | USB Type-C×1 / USB-A×2 | 記載なし |
| オウルテック OEC-LPB10024-BK | USB Type-C | USB Type-C×1 / USB Type-A×1 | Type-A 側だけと読める |
オウルテックの取扱説明書には、商品ページに無い一行があります。「Type-Cポートの入力と出力は兼用です。同時には使用できません」。 入力に使えるのは Type-C だけなので、パススルー中は Type-C が塞がり、出力に残るのは Type-A 側だけ、と読めます。
ただし、メーカーがそう書いた文ではありません。 商品ページの側は「2台同時充電&パススルー充電対応」と見出しで書き、7.5W の注記は置いていますが、Type-C が使えないことは書いていません。ここで言えるのは、取扱説明書の一行を重ねるとそう読める、というところまでです。
商品ページと取扱説明書で書いてあることが違うのは、このカテゴリだけではありません。ヘアドライヤーで両者を行ごとに突き合わせると、紙にしか無い行が製品ごとに違う場所にありました。 安全装置は確かめられた5点とも紙だけ、形名はシャープ、品名と品番はテスコム2点。逆にテスコムの直営ショップの仕様表にはコード長の行が無く、企業サイトと取扱説明書にはある。どちらか片方を読めば足りる、という形になっていません。
CIO は、ポートが最も多いのに最も書かれていません。 出力3ポートで入力は USB-C が2つ。パススルー中にどちらが入力になり、残ったポートが何Wになるのかは公表されていません。通常時は組み合わせごとに4通りのW数を書いている製品なので、この欄だけが空いているのは目立ちます。
入力専用ポートを持つのはエレコムだけ
4製品で入力が2系統あるのはエレコムだけです。USB Type-C と USB Micro-B の2つで、Micro-B は入力にしか使いません。
ここから読めることが1つあります。Micro-B 側から本体を充電すれば、出力ポートは1つも塞がらない。 出力の Type-C×1 と USB-A×2 がそのまま残る計算になります。4製品で、パススルー中に出力ポートを減らさずに済むと読めるのはここだけです。
ただし代償があります。公表されている入力は USB Type-C が最大15W、USB Micro-B が最大10W。 Micro-B を選ぶと本体側へ入る上限は 66.7% に下がり、公表されている満充電の約6時間も、特長欄を読むと Type-C から充電したときの数字です(充電時間を入力Wで割り直した記事)。
出力ポートを空けたままにするか、本体への入力を速くするか。 エレコムだけがこの選択を持っていて、そのことはどこにも書かれていません。
購入者レビューでは、同じ機能が両側に出ている
この機能は、製品をまたぐと評価の向きが逆になります。
CIO では、本体を充電しながら機器へ給電できて便利だという声が高評価側に出ています。 一方 Anker では、本体の充電中に他の機器へ給電できないことが低評価側に挙がっています。 同じ1つの機能が、ある製品では買ってよかった理由に、別の製品では不満の理由になっている。
引っかかるのは、対応しているエレコムでも低評価側に出ていることです。ケーブルを挿したままだと放電してしまう、本体に接続したまま別の機器を充電すると反応しないことがある、充電中なのかどうかが分かりにくい、といった内容が報告されています。
この原因はレビューからは切り分けられません。 「まとめて充電」の仕様どおりの挙動なのか、個体や機器との相性なのかは、書かれている範囲では決められない。いずれも購入者の報告であって、この記事で確かめたものではありません。
なお、オウルテックにも接続が途切れる・認識されなくなるという報告がありますが、それがパススルー中の話かどうかは書かれていないので、ここには数えていません。
では、何を見ればいいのか
商品ページで確かめるなら、この順に探すと見つかります。
1. 仕様表を先に諦める
今回の4製品では、仕様表に欄を持つ製品が1つもありませんでした。製品特徴、製品の特長欄、ご注意欄、そして取扱説明書。この4か所を見る前に「記載なし」と判断しない。
2. 「パススルー」以外の言葉でも探す
エレコムは「まとめて充電」でした。「同時に充電」「充電しながら給電」といった言い回しも候補になります。語が揃わないのは、電池の種類や航空機の区分と同じ構造です(同じ割れ方をした3項目を並べた比較記事)。
3. W数の記載があるかを見る
対応の1語だけなのか、そのとき何Wなのかまで書いてあるのか。今回はここで3対1に割れました。 W数が無ければ、その製品のパススルーがどのくらい使えるかは買う前に分かりません。
4. 順番の記載があるかを見る
本体と機器のどちらが先に充電されるか。書いてあるのは1社だけで、しかも2通りありました。急いでいるほうが後回しになる可能性は、読者の側で見ておくことになります。
5. 入力に使えるポートを数える
入力に使えるポートが出力も兼ねているなら、パススルー中はその1つが減ります。入力専用のポートがあるかどうかで、残るポート数が変わります。
買う前と、挿す前にやること
- 仕様表の外まで読む — パススルーの記載は、今回の4製品では全部が仕様表の外にありました。取扱説明書のPDFまで開くと、商品ページに無い制約が出てくることがあります
- W数が書いてあるかを確かめる — 書いてあれば、その製品の単ポート最大と比べる。今回の1社では25%でした。書いていなければ、比べようがないことを承知で選ぶことになります
- 2台とも急いでいるときは、パススルーに頼らない — 出力が落ちる製品では、1台ずつ挿すほうが速い可能性があります。落ちない製品かどうかは、上の2で分かります
- 届いたら、返品や交換を申し出られる期間のうちに試す — 本体を充電しながら手持ちの機器をつないで、両方が充電されるか、どちらが先に進むかを見る。相性の報告は公表値からは読み取れません
- 入力に使うポートを決めておく — 入力が2系統ある製品では、どちらを使うかで出力に残るポート数と本体への入力Wが変わります
- 候補を絞る段では、公表の深さごと見比べる — 容量・出力・充電時間をどこまで書く製品なのかは、パススルーと同じく製品ごとに違います。4製品の公表値を書いてある量の順に並べた比較記事にまとめてあります
まとめ
比較表の「対応/非対応/記載なし」という1語は、4製品とも仕様表の外から来ていました。 ご注意欄・製品特徴・特長欄・取扱説明書の4か所で、1つは商品ページにすら載っていません。そして「対応」と書いてある3製品のうち、そのとき何Wなのかを書いているのは1社だけ。その1社では、単ポート最大の 25% まで落ちます。
対応しているかどうかより、対応していると書いた人がその先をどこまで書いたか。4製品を並べて、いちばん効いたのはそこでした。