HOW TO CHOOSE
モバイルバッテリーモバイルバッテリーの充電回数|製品を変えても0.1回、スマホを変えると1.3回動く
この記事で分かること
公表値を読み解いて、選ぶ基準を整理。
モバイルバッテリー4製品の公表値から、5Vで取り出せる量を1,800mAhと3,000mAhのスマートフォンで割り直した。自分の機種だと何回充電できるのか買う前に見積もりたい人に向けて、回数を動かしているのが製品側ではなく割る側の数字であることを示した。
THE REASON BEHIND THE CHOICE
公表資料から、疑問を読み解く。
公開資料に基づく記事です。実機による検証は行っていません。
目次
「10000mAhだから2回ぶん」。そう見積もって買ったあとで、手元のスマートフォンが何mAhなのかを一度も確かめていなかったことに気づく。あるいは商品ページの「3000mAhのスマートフォンを約1.9回」を、自分の機種でも約1.9回だと読む。
充電回数は、割り算の答えです。 割られる側はバッテリーから5Vで取り出せる量、割る側は読者のスマートフォンの容量。メーカーが書けるのは前者だけで、後者は読者しか持っていません。 だから「何回充電できますか」は、そのままでは答えの出ない問いです。
4製品の容量表記を段で並べた比較記事では、割られる側をどこまで公表しているかで各社が4段に分かれるところまでを見ました。この記事が扱うのは、その次の1段だけです。割る側に数字を入れると、回数はどれだけ動くのか。
2026年9月時点のメーカー公表値と、その公表値どうしの割り算で進めます。実機は持っておらず、回数を数えた記録もありません。
割られる側は、4製品のうち2つしか埋まらない
まず、5Vで取り出せる量の公表を並べます。
| 製品 | 5V で取り出せる量 | その数字の出どころ |
|---|---|---|
| Anker A1388 | 記載なし | 商品ページに定格容量も Wh も無い。自社FAQが一般論として約6,000mAhと説明 |
| CIO SMARTCOBY TRIO 67W SS | 記載なし | 商品ページに定格容量の欄が無い |
| エレコム DE-C66-10000WH | 5,700〜5,940mAh | 参考充電回数(1800mAhを約3.3回/3000mAhを約1.9回)の掛け算 |
| オウルテック OEC-LPB10024-BK | 6,000mAh | 仕様表の「定格出力容量:5V/6000mAh」 |
この列の作り方そのものは比較記事に書いてあるので、ここでは結果だけ借ります。 掛け算で出る5,700〜5,940mAhも、メーカー表記の容量に対して両社が8割弱で並ぶことも、そちらに置いてあります。
CIO は上限だけなら出せます。77.4Wh ÷ 5V = 15,480mAh。 ただし、そこから昇圧の損失で何割落ちるかは商品ページに書かれていません。他社の比率を借りて当てれば数字にはなりますが、それは公表値ではなく推計です。回数の話に持ち込める製品ではない、というところで止めます。
Anker は自社FAQの計算を辿るとこうなります。10Ah × 3.7V = 37Wh、37Wh ÷ 5V = 7.4Ah、昇圧回路の効率を約82%として 6,068mAh。FAQ 自身は「約6,000mAh」と丸めて書いています。ただしこれは10,000mAh級の一般論として書かれた説明で、A1388 の公表値ではありません。
割る側に、メーカー自身が例示している数字を入れる
割る側の数字は手元の材料にありません。そこで、エレコムが参考充電回数で例示している1,800mAhと3,000mAhの2つを使います。 自分で刻みを置くこともできますが、そうすると根拠が公表値から離れます。メーカーが選んだ2点なら、どこから来た数字かを示せる。
| 製品 | 5V で取り出せる量 | 1,800mAh のスマホなら | 3,000mAh のスマホなら |
|---|---|---|---|
| エレコム DE-C66-10000WH | 5,700〜5,940mAh | 3.2〜3.3回 | 1.9〜2.0回 |
| オウルテック OEC-LPB10024-BK | 6,000mAh | 3.3回 | 2.0回 |
| Anker A1388 | 記載なし(FAQの一般論なら約6,000mAh) | (3.3回) | (2.0回) |
| CIO SMARTCOBY TRIO 67W SS | 記載なし | 計算できない | 計算できない |
エレコムの行は、公表されている回数を割り戻して得た量を、同じ数字でもう一度割っているので公表値に戻るだけです。ここで確かめられるのは、まったく別の書き方をしているオウルテックの数字が、同じ2つのスマホ容量で割ると同じ回数に着くということのほうです。片方は「約3.3回/約1.9回」と回数で書き、もう片方は「5V/6000mAh」と仕様の語で書いている。その仕様の語のほうを同じ2点で割ると3.3回と2.0回。エレコムが回数で書いている約3.3回・約1.9回と、0.1回しか離れません。
括弧を付けた Anker の行は、同社が一般論として説明している数字を当てはめたもので、この製品の公表値ではありません。それでも同じところに着くのは、3社が同じ10,000mAh級だからです。
ここから読めることは1つです。
- 製品を変えても、回数は0.1回しか動かない — 5,700mAhと6,000mAhの差は300mAh。メーカー表記の容量に対して5%です
- 割る側を変えると、1.3回動く — 1,800mAhと3,000mAhの差は1,200mAh。67%です
回数を動かしているのは、製品側ではなく割る側です。 10,000mAh級の3製品を比べて0.1回の差を気にするより、自分のスマートフォンが何mAhかを1度調べるほうが、見積もりは桁違いに正確になります。比較記事の基準2は「取り出せる量がメーカー表記の約77%に着く」ところまでを扱っていますが、その77%を何で割るかが決まらないと、回数は出ません。
回数を先に決めると、スマホ容量の上限が出る
同じ割り算を逆から使うこともできます。「2回ぶん持たせたい」と先に決めれば、その回数が成り立つスマートフォンの容量の上限が出ます。
- 2回ほしいなら — 6,000mAh ÷ 2 = 3,000mAh以下。エレコム側の5,700mAhで見れば2,850mAh以下
- 3回ほしいなら — 6,000mAh ÷ 3 = 2,000mAh以下。同じく5,700mAhなら1,900mAh以下
手元の機種がこの上限より大きければ、回数はそのぶん減ります。10,000mAh級の中で製品を選び直しても、動く幅は300mAhしかないので、この上限はほとんど動きません。 回数を増やしたいなら割られる側を大きくするしかありませんが、取り出せる量を公表している製品は今回の4つでは2つでした。
購入者が報告した回数を、割り戻してみる
購入者のレビューには、実際に何回充電できたかの報告が製品をまたいで出ています。その回数で公表の取り出し量を割ると、「何mAhのスマートフォンの話だったのか」が出ます。
| 報告されている回数 | 割られる側(出どころ) | 割り戻すと |
|---|---|---|
| Anker で約1.8回 | 約6,068mAh(自社FAQの一般論) | 約3,300〜3,400mAh |
| エレコムで2回 | 5,700〜5,940mAh(参考充電回数から) | 2,850〜2,970mAh |
| オウルテックで2〜3回 | 6,000mAh(定格出力容量) | 2,000〜3,000mAh |
3製品とも、2,000〜3,400mAhの帯に収まりました。 エレコムがメーカーとして例示している1,800mAhと3,000mAhの帯と、ほぼ重なります。
つまり、公表の回数と購入者の報告は食い違っていません。 食い違っているとすれば、読者が頭の中に置いている割る側の数字のほうです。「10000mAhだから2回」と見積もった人が、実際には3,000mAhより大きい機種を持っていれば、回数はそこで落ちます。落ちた原因は製品の性能ではなく、割り算の割る側にある。
同じ製品に、両方向の報告が出ている
エレコムでは、フル充電2回ぶん使えたという趣旨の報告と、実際の充電回数が説明されている回数より少ないことがあるという趣旨の報告が、どちらも出ています。 同じ製品に、両方向です。
公表されている条件を読むと、この2つは矛盾しません。エレコムは参考充電回数にこう注記しています。「満充電した本製品で電源オフの状態のスマートフォンを充電する際の目安回数です。充電中に電源を入れたり、機器を使用したりしている場合は記載の数値まで充電できない場合があります」。
電源オフのスマートフォンを充電する人は、あまりいません。 画面を見ながら充電すれば、そのぶんは回数に入りません。同じ製品で報告が割れるのは、使い方が公表の条件から離れる度合いが人によって違うからとみられます。
なお、この条件を書いているのは4製品でエレコムだけです。オウルテックは定格出力容量を電圧ごとに5つ並べますが、回数に翻訳していないぶん、どんな状態のスマートフォンを想定した数字かという話自体が出てきません。回数で書けば条件が要り、仕様の語で書けば要らない。 同じことを別の言葉で書いた2社の差が、ここに出ています。
では、何を見ればいいのか
回数を自分で見積もるなら、割る側から手を付けることになります。
- 自分のスマートフォンの容量(mAh)を先に調べる — メーカーの仕様ページか、端末の技術情報の案内に出ています。ここが分からないままだと、どの製品を選んでも回数は出ません
- mAh ではなく Wh で書かれていたら、5Vで割らない — スマートフォン側の Wh は電池そのもののエネルギーです。mAh に戻すなら電池側の電圧で割ることになりますが、その電圧の置き方で答えが動くのはモバイルバッテリー側で見たとおりです(同じ1台にある2つのWhの見分け方)
- 0.1回の差を気にしない — 10,000mAh級の3製品では、回数の差は0.1回でした。小数第1位まで信じられるほど精密な数字ではありません
- 公表の回数には条件が付いていないか探す — 「電源オフの状態の」のような一文は、仕様表ではなく製品の特長欄にあることがあります
- 回数のほうを先に決めて、上限で見る — 2回なら約3,000mAh以下、3回なら約2,000mAh以下。自分の機種がその上限を超えているかどうかだけなら、すぐ判定できます
買う前にやること
順番にやってください。
- 自分のスマートフォンの容量を調べて控える — この1つが無いと、以下の計算は始まりません
- 候補の製品が、5Vで取り出せる量を公表しているか見る — 今回の4製品では2つだけで、片方は定格出力容量、もう片方は参考充電回数という別の語で書いています
- 公表があれば、自分の容量で割る — 出た数字の小数第1位は目安として扱う。条件が「電源オフ」なら、使いながらではそこまで届きません
- 公表が無ければ、Wh ÷ 5V を上限として見る — 上限であって、取り出せる量ではありません。そこから何割落ちるかは、公表していない製品では分かりません
- どの製品がどこまで書いているかを先に見る — 4製品のメーカー表記の容量を書いてある量の順に並べた比較記事に、mAhの1行だけの製品から定格出力容量まで書く製品までを並べてあります
- 回数以外の条件も一緒に決める — 本体を充電し直す時間は約90分から約6時間まで開きがあります(充電時間を入力Wで割り直した記事)
- 届いたら本体ラベルの定格容量を読む — PSE の表示の関係で印字されているのが通常です。商品ページで見えなかった数字が、ここで初めて見えます
まとめ
10,000mAh級の3製品で、5Vで取り出せる量は5,700〜6,000mAhに収まりました。その300mAhの差は、回数にすると0.1回です。 割る側を1,800mAhから3,000mAhに変えると、同じ製品で3.3回が2.0回になる。こちらは1.3回動きます。
何回充電できるかは、製品の欄には書けない数字です。 割る側を持っているのは読者だけで、そこが決まって初めて回数になる。4製品を並べて、いちばん効いたのはそこでした。
読者の側にある数字をメーカーが代わりに置くと、今度はその条件のほうを確かめることになります。シャワーヘッドの節水率を検針票の㎥に直した記事では、掛ける側(1日の分数・人数・日数)まで自社で置いているのは5点で1点だけでした。ただしその条件を検算すると、公表の重み10/33/38/19%は合計5.25分でしか再現できず、同じ段落が「加算する」と書いている塗布の30秒は重みに入っていません。