HOW TO CHOOSE
ヘアドライヤーヘアドライヤーの「約40%カット」は何と比べた数字か|注記に書かれた比較対象が4段階に割れる
この記事で分かること
公表値を読み解いて、選ぶ基準を整理。
ヘアドライヤー6製品の特長コピーに付いた注記を、比べた相手がどこまで書かれているかで並べ直した。「約40%カット」「史上最大」の根拠を確かめたい人に向けて、型番まで書く注記と何も書かない注記の差と、試験機と比較機で消費電力が100W違うことを示した。
THE REASON BEHIND THE CHOICE
公表資料から、疑問を読み解く。
公開資料に基づく記事です。実機による検証は行っていません。
目次
商品ページの見出しには、数字の前に言葉が付いています。「乾燥時間を約40%カット」「ナノケア史上最大風量」「従来機種から約11%小型化」。
どれも、その1台だけでは決まらない言い方です。40%カットは何かと比べての40%で、「史上最大」は何かの範囲の中での最大。比べた相手が分からないかぎり、この数字は読めません。
では、その相手は同じページのどこかに書かれているのか。6製品の特長コピーと、そこにぶら下がった注記を、書いてある文字のまま集めました。書き方は4段階に割れます。 型番まで書くもの、試験の条件まで書くもの、範囲だけを書くもの、何も書かないもの。
6製品の風量を規格名ごとに並べ直した比較記事は、この話をテスコムの注記1件ぶんだけ検算して止めています。「従来機種からサイズは約11%小型化」が公表寸法から再現できたところまで。コイズミの「乾燥時間を約40%カット」は、そこに1文字も出てきません。
使うのは2026年9月時点のメーカー公表値(web の特長コピーと注記・ニュースリリース・カタログ)だけです。実機は持っていないので、書けるのは注記に何が書いてあるかと、その注記に出てくる公表値どうしの引き算まで。 数字が合っているかどうかには触れません。
先に結論を書きます。同じ「%」でも、公表値から追える%と、追えない%があります。 分けているのは製品の出来ではなく、注記が比較対象をどこまで書いているかのほうです。
相対を名乗る文10件を、書かれた文字のまま並べる
| 製品 | 相対を名乗るコピー(メーカー表記のまま) | 注記に書かれた比較対象 |
|---|---|---|
| テスコム TD570A | 従来機種からサイズは約11%小型化※3、質量は約8%※3軽量化 | ※3:従来機種 TID2400Bと体積、質量比較。当社測定法による。 |
| テスコム TID2400B | 大風圧 従来機種から109%にUP | ※4:当社製品TID2250と比較。当社測定法による。 |
| テスコム TID2400B | 従来機種より12%軽量化 | ※5:当社製品TID2250と比較。 |
| コイズミ KHD-W915 | マイナスイオン量約20%UP | ※当社従来品KHD-W905との比較 |
| コイズミ KHD-W915 | 独自形状のダブルファンが、乾燥時間を約40%カット | 試験機:KHD-W915(1300W)同等性能品 / 比較機:KHD-9802(1200W)・ノズル無し、毛束との距離30cm・第三者機関調べ |
| テスコム TD570A | シリーズ史上最軽量 約455g(セットフード付) | ※2:2024年4月、テスコムのSpeedomシリーズのドライヤーにおいて |
| テスコム TID2400B | シリーズ最軽量 | ※2:2022年11月、当社Speedomシリーズのドライヤーにおいて。 |
| パナソニック EH-NA0K | ナノケア史上最大風量※4 | ※4 国内販売商品において(風量【強】・ノズル装着なしの時) |
| シャープ IB-P300 | 約485gで軽量 折りたためてコンパクト | 記載なし |
| シャープ IB-P300 | 10万回以上のコード屈曲試験もクリアしています。 | 記載なし。試験方法の記載も無い |
| ダイソン HD08 | 未確認 | 未確認 |
比べた相手が型番や試験機として書いてあるのは5件、範囲で書いてあるのが3件、何も書いていないのが2件でした。1社が複数の型を持つので、製品の数より注記の数のほうが多くなります。
型番まで書く — 4件。ただし追えたのは1件
テスコムの3件とコイズミの1件です。相手の型番が書いてあるので、読者が自分でその製品の公表値に当たれます。
実際に当たれたのは、テスコムの ※3 でした。「従来機種からサイズは約11%小型化」「質量は約8%軽量化」の相手が TID2400B だと書いてあるので、両方の公表寸法と公表質量を持ってくれば計算できる。その検算は比較記事のテスコム TD570A の節にあります(体積は11.8%減、質量はフード付きどうしなら8.1%減、本体のみどうしだと7.4%減)。ここでは数え直しません。
追えないのは残りの3件です。 TID2400B の ※4・※5 が指す TID2250 は今回の6製品に入っておらず、その公表質量も風圧も手元にありません。風圧のほうは、TID2400B 自身の値も公表されていません。同じコピーの「大風量 2.3㎥/分」には値があるのに、風圧は比率だけで出てきて、風量とも風速とも並べられません。「従来機種より12%軽量化」から TID2250 の質量を逆算することはできますが、それは推定であって公表値ではないので、この記事ではやりません。コイズミの「マイナスイオン量約20%UP」も同じで、相手の KHD-W905 の公表値がない。イオンが何をするものかはここでは扱いません。 見ているのは、注記に型番が書いてあるかどうかだけです。
型番が書いてあることと、読者がその先まで追えることは別。 4件のうち追えたのは1件でした。
試験の条件まで書く — 1件
コイズミの「乾燥時間を約40%カット」です。10件でいちばん詳しい注記でした。
比較機の型番、試験機と比較機の消費電力、測った対象、距離、終わりの決め方、誰が測ったか。ここまで書いている注記は、6製品で1件だけです。
そのうえで、この注記を読むと分かることが2つあります。
1つめ。試験機と比較機で、消費電力が100W違います。 試験機は KHD-W915(1300W)、比較機は KHD-9802(1200W)。1300 ÷ 1200 = 1.083 で、試験に使ったほうが8.3%大きい電力の機械です。
2つめ。試験機は「KHD-W915 同等性能品」で、売っている KHD-W915 そのものだとは書かれていません。
この2つから言えるのは、この40%は公表値からは追えない、ということです。分母になった KHD-9802 は今回の6点に入っておらず、毛束を使った試験は仕様表の数字からは再現できない。テスコムの11.8%は公表寸法どうしの割り算で追えました。同じ「%」でも、追える%と追えない%がある。
範囲を書く — 3件。ただし年月があるのは2件
「シリーズ史上最軽量」「シリーズ最軽量」「ナノケア史上最大風量」。この3件は、相手を1台に決めず、範囲で書いています。
- テスコム TD570A … ※2:2024年4月、テスコムのSpeedomシリーズのドライヤーにおいて
- テスコム TID2400B … ※2:2022年11月、当社Speedomシリーズのドライヤーにおいて。
- パナソニック EH-NA0K … ※4 国内販売商品において(風量【強】・ノズル装着なしの時)
テスコムの2件には年月があり、パナソニックの1件にはありません。 代わりにパナソニックは測定の条件(風量【強】・ノズル装着なしの時)を書いています。同じ「範囲で書く」でも、時点を足す社と、測り方を足す社に分かれている。
範囲の中身のほうは、同じ社の資料で確かめられることがあります。パナソニックの新旧比較表では、上位機の EH-NC80 と EH-NC50 が 0.8㎥/分で、同じ社の中ではこの製品のほうが大きい。 これは比較記事のパナソニックの節に書いてあります。
「シリーズ最軽量」が、同じシリーズに2つある
年月の話が効くのはここです。
テスコムの2件は、どちらも Speedom シリーズの最軽量を名乗っています。同じ社の、同じシリーズで、最軽量が2つ。 ところが片方は2022年11月、片方は2024年4月の話で、時点が書いてあるので両方とも成り立ちます。
公表質量を並べれば順番は決まります。TID2400B が470g(本体のみ)/495g(セットフード付き)、TD570A が435g(本体のみ)/455g(フード付き)。どちらの組で比べても、2024年4月の側が軽い。 いま売られている2台のうち軽いのは TD570A のほうです。
ただし、それは注記の年月まで読んだ人にしか分かりません。 コピーだけを見ると、同じ「シリーズ最軽量」という言葉が2台に付いている。最上級の言葉は、日付を読むまで順位が決まらない。
誰が測ったかを書いているのは、5件で3件
比べた相手を書いた5件を、測り方の書き方でもう一度分けます。
- 当社測定法による … テスコム TD570A ※3、テスコム TID2400B ※4
- 第三者機関調べ … コイズミ 乾燥時間 約40%カット
- 記載なし … テスコム TID2400B ※5、コイズミ マイナスイオン量約20%UP
いちばん効くのはテスコム TID2400B です。隣り合う注記で、※4(大風圧)には「当社測定法による。」が付き、※5(12%軽量化)には付きません。 比べた相手はどちらも TID2250 で同じ。1ページの中で、測り方を名乗る注記と名乗らない注記が並んでいます。
パナソニックは、個別の注記ではなくページの末尾で受けていました。商品トップ・速乾ページ・新旧比較表の3ページに「試験条件は、特に記載のない場合は日本電機工業会自主基準HD-129に基づきます。」の1行がある。ページ全体の受け皿を1つ置く書き方で、6製品ではここだけです。 ただし、この自主基準が何を測るものなのかは、今回の資料からは確かめられていません。
何も書かない — 2件。「書いていない」と「読めていない」は別
シャープの2件です。カタログPDFの「約485gで軽量 折りたためてコンパクト」には、何より軽いのかが書かれていません。ニュースリリースの「10万回以上のコード屈曲試験もクリアしています。」にも、どういう試験なのかが書かれていない。 回数だけがあって、条件がない。
念のため書いておくと、この社が手を抜いているという話ではありません。 同じシャープは風量の欄では「※1 IEC規格にて測定。」と根拠を書いていて、それは6製品で2点しかない側です。社ごとではなく注記ごとに書き方が違うというのが、10件を並べて出てきた形でした。
そしてダイソン HD08 は、この2件と同じ欄に置けません。 公式の製品ページに到達できず、取扱説明書には仕様表そのものが無いので、このメーカーが何と比べて何を名乗っているのかを1文字も取れていない。 読んだうえで無いことを確かめた状態と、そもそも読めていない状態は別です。
注記はあるのに、たどり着けないことがある
TD570A の商品ページには、同じ ※3 が2つあります。
- ※3:従来機種 TID2400Bと体積、質量比較。当社測定法による。
- ※3:放出イオン量 約1,000万個/c㎥以上
本文の「約11%小型化※3」がどちらを指すかは前後から読めますが、記号としては同じ ※3 で、番号をたどるだけでは決まりません。 同じページにはもう1つ「※4:当社測定法/当社比較検証法による。」という注記もあり、こちらは測り方だけを書いていて、比較対象がありません。
注記があることと、比較対象にたどり着けることは別、という例です。
購入者が比べている相手は、いま使っている1台
6製品の評価を横断して読むと、「前に使っていたものと比べて」という形の言葉が5製品に出てきます。
- 前のモデルより劣っている、別のブランドのほうが良かった(シャープ IB-P300)
- 前のドライヤーと乾くスピードが変わらない(テスコム TD570A)。同じ製品の低評価には、風量の割に時間が短くならないという指摘もあります
- 前に使っていたドライヤーより優れている(テスコム TID2400B)
- 以前使っていたドライヤーより優れている、他社の製品より劣っている(コイズミ KHD-W915)
- もっと安い製品でも足りる(ダイソン HD08)
読者が持っている比較対象は、たいてい「いま使っている1台」です。 一方、メーカーが注記に書いている比較対象は、自社の前の型(TID2400B・TID2250・KHD-W905)か、自社のシリーズの中か、試験用の機械(KHD-9802)。この2つは1件も重なりません。
だから「約40%カット」を読んでも、自分の1台から何がどうなるかは、その注記からは出てきません。 出てくるのは「メーカーの前の型から、その試験の条件で」という話です。
では、何を見ればいいのか
1. %や「最大」を見たら、同じ画面で注記記号を探す。 10件のうち、比べた相手が書いてあったのは5件、範囲だけが3件、何も無いのが2件でした。
2. 注記に型番があるなら、それが自分の1台かを見る。 違うなら、その%は自分の乗り換えの話ではありません。今回の4件は、すべて自社の前の型が相手でした。
3. 「史上」「最」の付いた言葉は、年月を探す。 同じシリーズに最軽量が2つある例がありました。年月が無いものは、いつの時点の話かが決まりません。
4. 試験の条件が書いてあるなら、試験機の型番まで見る。 「同等性能品」と書いてあれば、それは売っている製品そのものではありません。
5. 比較対象が書かれていないコピーは、順位を作らない。 「軽量」「コンパクト」は、比べる相手を決めた人の側で決まる言葉です。同じ「コンパクト」が6製品でいちばん小さい製品にも、いちばん大きい製品にも付いていることは、収納の記事のほうで見ました。
注記に書かれた試験の条件が自分の使い方と同じかを先に見る、という同じ型は「洗濯物2kg・6畳・20℃」は自分の部屋のことかにも書きました。
買う前にやること
- いま使っている1台の型番を控える — メーカーの注記が指しているのは自社の前の型です。自分の1台と同じでないかぎり、その%は自分の乗り換えの話になりません
- 注記記号を、本文と注記の両方で数える — 同じ番号が2回出てくるページがありました。番号が合わないときは、その%の分母は決まりません
- 年月の入った注記を先に読む — 「シリーズ最軽量」は時点で入れ替わります。公表質量まで見れば、いま軽いのがどちらかは決まります
- 6製品の風量と規格名を並べ直した比較記事に戻る — 同じことが仕様表の側でも起きています。同じ2.3㎥/分に「JIS規格」と「当社測定法」が付いていて、その根拠がどこに書いてあるかは製品ごとに違います
「約40%カット」も「史上最大」も、メーカーが嘘を書いているという話ではありません。書いてあるのは事実で、足りないのは比較対象のほうです。 そして比較対象は、製品ごとどころか、同じページの注記ごとに書かれたり書かれなかったりしていました。