HOW TO CHOOSE
ポータブル電源ソーラーの「最短◯時間」|パネル定格の何割が入っている計算かを割り戻す
この記事で分かること
公表値を読み解いて、選ぶ基準を整理。
ポータブル電源のソーラー充電時間を、公表値から平均入力に割り戻してパネルの定格に対する比を出した。パネルを足すか迷っている人に向けて、比が43%から89%まで約2.1倍割れること、枚数の上限まで挿すと本体の入力上限で頭打ちになることを公表値の割り算だけで示す。
THE REASON BEHIND THE CHOICE
公表資料から、疑問を読み解く。
公開資料に基づく記事です。実機による検証は行っていません。
目次
「400Wソーラーパネル2枚で最短1.8時間」。ポータブル電源の商品ページに、その1行が置いてあります。1000Wh級が2時間かからずに満タンになるなら、停電が長引いても回していけそうに見える。
ところが同じページの別のところに、本体が受けられるソーラー入力の上限が書いてあります。600W。400Wのパネルを2枚つなぐと定格の合計は800Wで、上限のほうが200W少ない。
公表されている「最短◯時間」は、つないだパネルの定格に対して何割が入っている計算なのか。 そして、パネルを足していくとどこで頭打ちになるのか。この記事はその割り算だけをやります。
「最短◯時間」に条件が付いていること自体は、5製品を公表値で並べ直した比較記事で書きました。ここでやるのは、その条件の中で数字が何を意味しているかの割り戻しです。使うのは2026年9月時点のメーカー公表値だけで、実機もパネルも持っていません。日射量や天候の話はしません。
ソーラーの充電時間は、3通りの書き方で公表されている
まず公表値をそのまま並べます。
| 製品 | ソーラー充電時間の書き方 | ソーラー入力の上限 |
|---|---|---|
| Jackery 1000 New | 入力Wごとに3行(100W → 15時間 / 200W → 8時間 / 400W → 3時間) | PV 最大400W(2ポート、電流制限21A) |
| Anker Solix C1000 Gen 2 | 最短1.8時間 / 2枚 ※400Wソーラーパネル使用時 | 最大600W |
| Anker Solix C1000(旧) | 最短2.0時間 / 2枚 ※400Wソーラーパネル使用時 | 最大600W |
| EcoFlow DELTA 3 Plus | 記載なし | 1000W(1ポートあたり最大500W × 2) |
| PowerArQ S10 Pro | 充電時間(ソーラーパネル 150W×2枚)〜8時間 | 記載なし |
同じことを言っているのに、書き方が揃っていません。Jackery は入力のWで、Anker は枚数とパネル出力で、PowerArQ は枚数と1枚あたりのWの掛け算で書いています。 そして PowerArQ の8時間は商品ページの仕様表にはなく、公式の性能比較ページにだけあります。仕様表は15行ありますが、そこにソーラーの行は1つもありません。
入力上限のほうも、400W・600W・1000Wと2.5倍開いています。
時間から平均入力を割り戻すと、43%から89%まで割れる
容量を公表の時間で割ると、その時間が成立する平均の入力Wが出ます。それをパネルの定格と比べます。すべて公表値どうしの割り算です。
| 製品(つないだパネル) | 容量 ÷ 公表の時間 | パネル定格に対して |
|---|---|---|
| Jackery(パネル100W) | 1070Wh ÷ 15時間 = 71W | 71% |
| Jackery(パネル200W) | 1070Wh ÷ 8時間 = 134W | 67% |
| Jackery(パネル400W) | 1070Wh ÷ 3時間 = 357W | 89% |
| Anker Gen 2(400W×2枚 = 800W) | 1024Wh ÷ 1.8時間 = 569W | 71% |
| Anker C1000 旧(400W×2枚 = 800W) | 1056Wh ÷ 2.0時間 = 528W | 66% |
| PowerArQ(150W×2枚 = 300W) | 1024Wh ÷ 8時間 = 128W | 43% |
いちばん低い43%といちばん高い89%で、約2.1倍の開きがあります。 同じ容量帯で、同じ「ソーラーで満充電までの時間」を書いているのに、パネルの定格に対する詰まり方がこれだけ違う。
同じ社の同じ表の中で、67%と89%が並ぶ
上の表の最初の3行は、Jackery の同じ充電時間表から出てきたものです。社をまたがなくても、71%・67%・89%と割れます。 しかも真ん中の200Wの行がいちばん低い。
パネルを倍にしたときの縮み方も一定ではありません。100Wから200Wへ倍にすると15時間が8時間で1.875倍。200Wから400Wへ倍にすると8時間が3時間で2.67倍です。入力を2倍にして、時間が半分より短くなる並びが、同じ表の中にあります。 その理由になる条件は書かれていません。
頭打ちの位置は、枚数の上限と入力上限を掛け合わせると出る
最大接続枚数をパネル出力ごとに公表しているのは、5製品で Anker の2つだけです。枚数の上限まで挿したときの定格の合計を、本体の入力上限600Wと並べます。
| つなぐパネル | 枚数の上限(Gen 2 / 旧C1000) | 合計の定格 | 入力上限600Wに対して |
|---|---|---|---|
| 100Wパネル | 2枚 / 3枚 | 200W / 300W | 33% / 50% |
| 200Wパネル | 3枚 / 3枚 | 600W | ちょうど100% |
| 400Wパネル | 2枚 / 2枚 | 800W | 133%(上限を超える) |
枚数の上限まで挿しても、パネルの合計が本体の入力上限とちょうど噛み合うのは200Wパネルのときだけです。 100Wパネルは上限の3分の1か半分までしか埋まらず、400Wパネル2枚は定格800Wぶん挿せるのに600Wで止まる。
800Wを挿しても、本体が受けるのは600W
そして「最短1.8時間」「最短2.0時間」は、どちらもその400Wパネル2枚のときの値として公表されています。800Wに対して600Wは75%。パネルが定格どおりに発電したとしても、パネル定格に対する比が75%を超える計算にはなりません。
割り戻した569Wは、パネル定格の71%。75%のすぐ下です。入力上限600Wのほうを分母にすると94.8%になります。旧C1000 の528Wも、上限600Wに対して88.0%。
つまりこの2製品では、パネル定格の75%から上にある25ポイントぶんが、天候とは関係なく仕様表の側で先に閉じています。 パネルを足していっても、600Wで頭打ちになる。
Jackery だけは、パネル定格と入力上限が同じ位置にある
Jackery の PV 入力上限は400Wで、上限を公表している4製品では最も低い。そして充電時間表のいちばん速い行も400Wです。この1行だけは、パネルの定格と本体の上限が同じ数字で重なっています。 3行でいちばん高い89%が出ているのはここです。
上限をそのまま使い切ったときの時間(容量 ÷ 上限W)と、公表の時間を並べるとこうなります。
| 製品 | 容量 ÷ 入力上限 | 公表の最短時間 | 比 |
|---|---|---|---|
| Jackery(上限400W) | 1070 ÷ 400 = 2.7時間 | 3時間 | 89% |
| Anker Gen 2(上限600W) | 1024 ÷ 600 = 1.71時間 | 1.8時間 | 95% |
| Anker C1000 旧(上限600W) | 1056 ÷ 600 = 1.76時間 | 2.0時間 | 88% |
3製品とも、上限で割った理論値のすぐ上に公表値が置かれています。 比較記事で出したAC側の割り戻し(上限に対して42%・76%・84%・73%)とは、並び方が違う。同じ社が、入力の種類によって違う詰め方の数字を表に載せているとみられます。
割り戻せない2製品を、そのまま並べる
残る2製品は、片方ずつが欠けていて計算になりません。
EcoFlow DELTA 3 Plus — ソーラー入力1000W(1ポートあたり最大500W × 2)で、入口は5製品で最も大きい。 ところがソーラーでの充電時間を公表していません。 上限をそのまま使い切る計算をすれば 1024 ÷ 1000 で約1.0時間ですが、他の3製品では上限の88〜95%の平均でしか成立していないので、その値が出るとは限りません。いちばん広い入口を持ちながら、その入口で何時間かが書かれていないという形です。
PowerArQ S10 Pro — 逆に、時間(〜8時間)はあってソーラー入力の上限がありません。 比較記事では、この製品がAC側でも「充電時間 ≒ 容量Wh ÷ 入力電力W」という式を自社のFAQに出しながら、その式に代入する入力電力Wを仕様表に持っていないことを書きました。同じ形が、ソーラー側でも起きています。 割り戻した128Wが上限のどのあたりなのかは、確かめる相手がいません。
購入者レビューは、3製品にまたがって同じ形の指摘を出している
ソーラーについての指摘は、Jackery で繰り返し挙がり、Anker Gen 2 と EcoFlow でも出ています。晴天でも充電が弱い、影があると効率が落ちる、曇りや冬場は発電量が期待より少ない、ソーラーは補助程度と考えるべき、災害時の期待値は低い。
天候の話は、公表値の割り算では説明できません。ただし、400Wパネル2枚という条件で「定格ぶんが入らない」と感じる部分のうち、パネル定格の75%より上にあたるところは、天候と関係なく本体の入力上限で先に決まっています。
では、何を見ればいいのか
充電時間の数字が条件付きで比べられないなら、代わりに見る材料が要ります。
1. 本体のソーラー入力の上限W
400W・600W・1000Wと2.5倍開きます。ここが実際に入る量の天井です。5製品では PowerArQ だけ行そのものがありません。
2. 最大接続枚数が、パネル出力ごとに書かれているか
書いているのは Anker の2製品だけです。そして枚数の上限まで挿すと定格が上限を超える組み合わせが、2製品ともあります。
3. 上限Wとパネル合計Wの、小さいほう
公表値の上で入るのは小さいほうまでです。そこで容量を割れば、いちばん短い側の時間が出ます。
4. 時間が入力Wで書かれているか、枚数で書かれているか
枚数で書かれているときは、1枚あたりのWが※注記にしかないことがあります。枚数だけを見ると、定格の合計が分からないまま選ぶことになります。
パネルを足す前にやること
- 本体のソーラー入力の上限を、仕様表で確かめる — web の商品ページに無い製品があります。Anker の2製品も EcoFlow も、上限Wが行として置かれているのは取扱説明書PDFのほうです
- つなぐパネルの定格を合計して、上限と比べる — 超えているぶんは、公表値の上では入らない計算になります。400Wパネル2枚と600Wの上限は、その形です
- ポートごとの上限も見る — EcoFlow は1ポートあたり最大500Wで合計1000W。1枚で1000Wを入れる形にはなっていません。Jackery は2ポートで電流制限21A、合計400Wです
- 容量 ÷(上限とパネル合計の小さいほう)を自分で出す — 公表の「最短◯時間」と並べると、その数字がどのくらい上限寄りに置かれているかが分かります
- ACで満充電にできる前提で本体を選ぶ — ソーラー側の条件を詰めても、AC側の時間とモードの話は別に残ります。AC満充電の時間を入力上限で検算した比較記事に、5製品ぶんの割り戻しを置いてあります
- 使う側の見積もりにも同じ割り算をかける — 各社の使用時間の目安をWhに戻して割り戻した記事が、出す側の比を扱っています
まとめ
ソーラーの「最短◯時間」は、パネルの定格に対して43%から89%までばらついた計算になっていました。同じ社の同じ表の中でも67%と89%が並びます。
そして400Wパネル2枚という条件は、本体の入力上限600Wと噛み合っていません。パネル定格の75%より上は、最初から入らない計算です。 枚数の上限まで挿してちょうど上限に届くのは、200Wパネルのときだけでした。入口の広さと、そこで何時間かかるかの両方が揃っている製品は、5製品で3つです。