HOW TO CHOOSE
ポータブル電源1000Whで何時間使えるか|容量÷家電のWは、メーカーの目安と最大3.1倍ずれる
この記事で分かること
公表値を読み解いて、選ぶ基準を整理。
ポータブル電源の使用時間を、各社が出している家電ごとの目安からWhに戻して割り戻した。容量÷消費電力で見積もりたい人に向けて、同じ表の中で比が33%から83%まで割れること、2社の目安が同じ方向を向いていないことを公表値の計算だけで示している。
THE REASON BEHIND THE CHOICE
公表資料から、疑問を読み解く。
公開資料に基づく記事です。実機による検証は行っていません。
目次
「1000Wh」と書かれた1台を前にして、最初にやるのは割り算です。電気ケトルが850Wなら 1000 ÷ 850 で約1.2時間。これで足りるかを決めようとする。
ところが同じメーカーのページを下へたどると、「電気ケトル(850W)約1時間」という目安が置いてあります。近いようで合っていない。もっと小さい機器を見ると、差はもっと開きます。
では、使える時間を見積もるときに何を掛ければいいのか。 この記事はそれだけを掘ります。
やることは1つです。各社が載せている「◯◯が何時間使えるか」の目安を、消費電力W × 時間 で Wh に戻し、メーカー表記の容量の何%にあたるかを機器ごとに並べます。 係数を書いていない社でも、割り戻せば前提は見えてきます。
2026年9月時点のメーカー公表値だけを使います。実機は持っていないので、測った時間は1つも出てきません。インバータの変換効率を仕様として公表している社が5製品で0であることは5製品の公表値を並べた比較記事に書きました。ここで見るのは、その効率を書いていない社が自分の目安表の中で何を掛けているかです。
逆算できるのは、5製品で2つだけ
| 製品 | 使用時間の目安 | 逆算に使えるか |
|---|---|---|
| Jackery 1000 New | FAQ に6項目。全項目に消費電力Wが併記 | 使える |
| Anker Solix C1000 Gen 2 | 商品ページの画像の中 | 使えない |
| Anker Solix C1000(旧) | 商品ページの画像の中 | 使えない |
| EcoFlow DELTA 3 Plus | 記載なし | 使えない |
| PowerArQ S10 Pro | 性能比較ページに10項目。うちWの併記は3項目 | 使える |
Anker の2製品は、目安が画像の中に置かれています。 テキストとして取り出せないので、公表値としては書き写せません。※注記に「充電回数は各機器の定格消費電力に基づく計算上の数値(Anker調べ)」とあるだけで、係数の記載はありません。EcoFlow は、商品ページにも取扱説明書にも使用時間の目安がありません。
5製品中3製品は、以下の表で空欄になります。 目安が無いことが悪いのではなく、買う前に自分で見積もろうとしたときに手がかりが無い、ということです。
Jackery の目安を戻すと、33%から83%まで割れる
FAQ「具体的にどのような家電を、どのくらいの時間使用できますか?」に6項目あり、全項目に消費電力Wが書いてあります。 時間で書かれた項目を、そのまま掛け算に戻します。メーカー表記の容量は1070Whです。
| 家電(FAQ の表記) | W × 時間 | メーカー表記の1070Whに対して |
|---|---|---|
| 電気ケトル 850W × 約1時間 | 850Wh | 79% |
| 冷蔵庫 520W × 約1.7時間 | 884Wh | 83% |
| 電気毛布 55W × 約12時間 | 660Wh | 62% |
| 冷蔵庫 15W × 約38時間 | 570Wh | 53% |
| LED照明 10W × 約35時間 | 350Wh | 33% |
同じ FAQ の同じ回答の中で、比が33%から83%まで2.5倍開いています。 そして向きがある。消費電力が小さい機器ほど、比が低い。
読者が素朴にやる「容量 ÷ 家電のW」と突き合わせると、そのずれ方が時間の側にも出ます。
| 家電 | 1070 ÷ W | Jackery の目安 | ずれ |
|---|---|---|---|
| 電気ケトル 850W | 1.26時間 | 約1時間 | 約1.3倍 |
| 冷蔵庫 520W | 2.06時間 | 約1.7時間 | 約1.2倍 |
| 電気毛布 55W | 19.5時間 | 約12時間 | 約1.6倍 |
| 冷蔵庫 15W | 71.3時間 | 約38時間 | 約1.9倍 |
| LED照明 10W | 107時間 | 約35時間 | 約3.1倍 |
数百Wの家電なら1.2〜1.3倍しか外れないのに、10Wの照明では3.1倍外れます。 割り算で107時間と出たものを、メーカーは35時間だと言っている。
小さい機器ほど比が下がるのは、待機電力や変換の固定損失が効いているためとみられます。長く動かすほど、その固定ぶんが積み上がるからです。ただしJackery は条件を1文字も書いていないので、断定はできません。
同じ「冷蔵庫」で、Wが35倍の幅で書かれている
冷蔵庫の行は「15-520W」で、約1.7〜38時間。 消費電力が35倍の幅で書かれ、時間も22倍の幅になっています。つまりこの行は、自分の冷蔵庫が何Wかを知らないかぎり使えません。 目安表を読む前に、機器側を確かめる作業が要ります。
PowerArQ に同じ操作をすると、向きが逆になる
PowerArQ は公式の性能比較ページに「使用機器の目安」を10行持っています。ただしWが書かれているのは3行だけで、車載冷蔵庫・小型プロジェクター・電気カーペットにはありません。戻せるのは次の3行です。メーカー表記の容量は1024Wh。
| 家電(比較ページの表記) | W × 時間 | メーカー表記の1024Whに対して |
|---|---|---|
| 電気ドリル 800W × 1時間 | 800Wh | 78% |
| 扇風機 30W × 29時間 | 870Wh | 85% |
| 電気毛布 35W × 17時間 | 595Wh | 58% |
扇風機の870Whが同社の公表する実効容量と一致することは比較記事でも触れました。見たいのはその先です。同じ操作を3行に広げると、30Wの扇風機が85%、800Wの電気ドリルが78%。小さい機器のほうが高く出ています。
Jackery とは向きが逆です。 Jackery は10Wで33%まで落ちましたが、PowerArQ は30Wでも落ちない。2社の目安は、同じ方向を向いていません。 どちらかが間違っているのではなく、係数の作り方が違うということです。片方の社の目安から得た感覚を、もう片方の製品に持ち込むことはできません。
「電気毛布 同時2枚 29時間」は、戻すとメーカー表記の約2倍になる
同じ表には「電気毛布(35W)17時間」と「電気毛布(同時2枚)29時間」が並んでいます。2枚なら消費は倍なので短くなるはずが、逆に長い。比較記事はここまで書いて止めました。
同じ操作で戻します。 35W × 2枚 = 70W。70W × 29時間 = 2,030Wh。メーカー表記の1,024Whの約198% — つまり容量の約2倍を使う計算になっています。実効容量870Whを分母にすれば、比はさらに上がります。
そして**「29時間」は、この表に3回出てきます。** 電気毛布の同時2枚、扇風機30W、車載冷蔵庫。扇風機の29時間は 870 ÷ 30 = 29.0 で説明が付きますが、残る2行のWは書かれていないので、同じ根拠なのかは分かりません。
「スマートフォン◯回」は、1回の中身が2社で2.4倍違う
時間ではなく回数で書かれた行にも、同じ操作ができます。
- Jackery — 「スマートフォン充電(29W)約45回」。1070 ÷ 45 = 1回あたり約23.8Wh
- PowerArQ — 「スマートフォン 87回」。1024 ÷ 87 = 約11.8Wh。実効容量870Whのほうで割ると 870 ÷ 87 = ちょうど10.0Wh
PowerArQ の87回は、実効容量を1回10Whで割った数とぴったり合います。 扇風機の行と同じ基準です。一方 Jackery の1回は約23.8Wh。同じ「スマートフォン1回」が、2社で2.4倍違います。
どちらの社も、1回が何Whのことなのかを書いていません。回数の行は、想定した機種が書かれないかぎり社をまたいで比べられない。 「87回」と「45回」を並べて前者が長持ちすると読むことはできません。
600Wの家電なら、何時間ぶんか
比較記事では「1000Whは600Wの家電なら1.7時間ぶん(PowerArQ が出している変換効率85%を掛ければ約1.4時間)」と書きました。あれは PowerArQ の係数を当てた計算です。
ここで割り戻した比で同じことをやると、600W を挟む2行が使えます。520Wで83%、850Wで79%。1.7時間に掛けると 約1.3〜1.4時間。別の社の別の根拠から、近いところに着地しました。 ただしこれは Jackery の目安を Jackery の製品に当てただけで、Anker と EcoFlow に当てる根拠はありません。
購入者レビューは、減り方の話をしている
製品をまたいで出ているのは、電子レンジやドライヤーを同時に使うと減りが速い、車中泊で使い続けると消費が速い、冬のキャンプで2泊すると容量が足りない、といった指摘です。残量表示について、容量の20%ぶんを使ったように見えて実際は数%程度だった、という指摘も出ています。一方で、冷蔵庫を長時間動かせた、高負荷の家電も使えた、という評価もあります。
割れて見えますが、どちらも「何Wの機器を何時間」という形にはなっていません。 そして、割り戻した比がいちばん高く出た(=容量を多く使える前提で書かれていた)のは、どちらの社も数百W以上の行でした。Jackery の850Wで79%、PowerArQ の800Wで78%。レビューで減りが速いと言われているのも同じ領域です。目安の前提がいちばん強気な場所と、不満が出ている場所が重なっています。
では、何を見ればいいのか
- その表に消費電力Wが書いてあるか — 書いていない行は戻せません。PowerArQ の10行のうちWがあるのは3行、Anker は画像の中、EcoFlow は表そのものがありません
- 同じ表の中で係数が揃っているか — 割り戻しを2〜3行ぶんやれば分かります。揃っていなければ、その表の1行を自分の機器に当てはめる根拠がありません
- 「回」で書かれた行は、社をまたいで使わない — 1回が何Whかが書かれていないかぎり、同じ「1回」が2.4倍違います
使える時間を見積もる手順
- つなぐ機器のWを、本体の銘板か取扱説明書で確かめる — 商品ページの数字ではなく現物の表示です。幅のある機器は上限と下限の両方を控える
- 容量 ÷ 合計W で上限を出す — これはいちばん長く見積もった値なので、ここまで届かない前提で扱う
- 数百Wの機器なら1.2〜1.3倍、数十W以下なら1.6〜3.1倍の余裕を見る — Jackery の目安から読み取れた幅です
- 係数を掛けるなら、その社が出している数字だけを使う — 自分から係数を出しているのは5製品で1社だけでした(5製品の公表値を並べ直した比較記事)
- 劣化したあとの容量でも一度計算する — メーカー表記の容量は新品の値です。何回で何%まで落ちる話は寿命と保証を年に直して並べた記事にまとめてあります
- 届いたら、実際につないで残量の減り方を見る — 目安表は各社の計算値で、測定条件は公表されていません。自分の機器での減り方だけが、条件の揃った数字になります
まとめ
「容量Wh ÷ 家電のW」は、上限を出す計算です。メーカーの目安と突き合わせると、数百Wの家電では1.2〜1.3倍のずれで済み、10W級の照明では3.1倍ずれました。
割り戻して分かったのは、係数が社ごとに違うだけでなく、同じ表の中でも機器ごとに違うということです。Jackery は小さい機器ほど保守的になり、PowerArQ は容量いっぱいの計算のまま。掛ける数字を1つ選んで全社に当てる、という使い方はできません。 そして戻せたのは5製品で2つだけで、残る3製品は目安の数字にたどり着く手段が買う前のページに無い、というところで止まっています。